SDGs×水素エネルギー

SDGs×水素エネルギー

あなたは、エネルギーを使っていますか?
目に見えないそれは、
さまざまな場所で
私たちの生活を支えています。
スマホを充電する、
お風呂をわかす、クルマで移動する……
どれもエネルギーです。
そして今、世界が気づきはじめています。
それは、くらしをあたりまえに支える
エネルギーは、
あたりまえに
存在するものではない、
ということ。
私たちが使うエネルギーはそのまま、
気候変動や、資源の枯渇といった、
地球規模のテーマとつながっています。
こうした大きな問題を解決するために、
世界共通の目標として掲げられたのが、
「SDGs—持続可能な開発目標」です。
「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
「気候変動に具体的な対策を」
といった17個のテーマで構成され、
193か国が、2030年までの
達成を目指しています。
このSDGsに関わるさまざまな取り組みの
中で、
ひとつの鍵を握ると言われているもの。
それが、水素エネルギーです

ここでは、水素エネルギーとは何か、
そしてその未来の可能性について、さまざまな
視点から紹介していきます。

水素の基本×水素エネルギー

水素の基本×水素エネルギー

そもそも水素とは何でしょうか?
元素番号1番、宇宙にもっとも多く
存在する元素「H」。
地球上ではおもに
水(H2O)として存在していますが、
水に電気を流すと、
水素(H2)と酸素(O2)に分けることが
できます

逆に、水素と酸素を
反応させると、
電気を取り出すことが
できます。また、天然ガスと同じように、
燃やすことでエネルギーを取り出すことが
できる特徴も持っています。
これを踏まえて、水素のエネルギーとしての
使い方は、大きく2つ

「燃やして使う」と「電気を取り出して使う」
たとえば宇宙へ飛んでいくロケットは、
水素を燃やすことで得られる大量のエネル
ギーを利用しています。
一方、私たちに身近なところで
多く使われるのは、
水素で発電する
「燃料電池」という仕組みです。
どちらの場合も、排出されるのは水だけ
二酸化炭素や大気汚染物質を出さないため、
究極のクリーンエネルギーと呼ばれています。

モビリティ×水素エネルギー

モビリティ×水素エネルギー

私たちのくらしの近くで使われる、
水素エネルギー。
その代表的なものが、
クルマです。
水素と酸素を反応させて
電気を取り出し、
この電気でモーターを
回転させて走るクルマは、
「燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle,
FCV)」
と呼ばれています。
実はこのFCVを、世界に先がけて
実用化したのは、日本。
現在は乗用車として販売されているほか、
公共バスとしても普及が進み、
全国で約5000台のFCVが走っています
またFCVを走らせるためには、
ガソリンスタンドでガソリンを
入れるように、
水素を入れる
水素ステーションが必要です。
水素ステーションは現在約140か所に整備
さらに建設が進んでいます。
他にも、燃料電池で進む船、
燃料電池で飛ぶドローンなど、
水素エネルギーはさまざまな移動手段
(モビリティ)に活用されています。

家庭×水素エネルギー

家庭×水素エネルギー

「エネファーム」という名前を
聞いたことがあるでしょうか?
家のなかで電気をつくり、そのときに
生まれる熱を使って、
お湯を沸かすこともできるというもの。
実はこれも、燃料電池です。
ただしエネファームには、
水素ステーションなどは必要ありません。
使うのは、一般的な都市ガスだけ。
都市ガスに含まれるメタン(CH4)から
水素を取り出し、発電します。
くらしに必要な電力や熱を、
水素からつくる

私たちに身近な
水素エネルギーの利用技術です。
また、こうした燃料電池は、ホテルや駅、
ビル、工場といった
さまざまな商業施設で、
大型のものが使われています。
東京2020オリンピック・パラリンピック
でも、
世界各国のアスリートが宿泊する
選手村に、燃料電池が設置されました。

再生可能エネルギー×水素エネルギー

再生可能エネルギー×水素エネルギー

環境にやさしいエネルギーといえば、
たとえば太陽光や風力が思い浮かぶでしょうか。
こうした「再生可能エネルギー」は、
実は水素エネルギーと
組み合わせることで、
その力を最大限発揮
します。
太陽光や風力の弱点、それは、
安定して電気を届けるのが難しいということ。
日が照っているとき、風が強いときなど、
時間によって発電量にムラができるのです。
この問題を解決するひとつの方法が、
電気を水素にして貯めておくこと。
まず再生可能エネルギーの電気で
水素をつくり、貯める。
電気が必要な場所まで水素のまま運び、
最後に燃料電池を使って電気に戻します。
また電気以外にも、たとえば
クルマの燃料として使うこともできます。
たくさん発電できるときに、
たくさん水素をつくっておくことで、
再生可能エネルギーのムラをなくす

ことができるのです。
環境にやさしい
サステナブルの社会の実現に向けて、
再生可能エネルギー×水素エネルギーの
組み合わせは、
大きな可能性を秘めています。

宇宙×水素エネルギー

宇宙×水素エネルギー

近い将来、人類が月にくらす
月面基地ができると言われています。
そこで活躍が期待されているのが、水素です。
水素があれば、月面を移動する車両や、
上空と行き来する宇宙船を動かす

ことができます。
問題は、水素をどこから持ってくるか。
地球から大量の水素を運ぶのは、
あまりにコストがかかります。
実は、月の地下には、大量の氷が存在
することがわかっています。
この氷を溶かして水をつくり、
水を分解して水素をつくる
研究が、
今、世界各地で進められています。
そもそも燃料電池は、アメリカのNASA
(宇宙航空開発局)が、
宇宙船で電気をつくるために開発したもの
(あの月面探査機アポロにも
搭載されていました)。
これから始まる人類の宇宙時代、
水素エネルギーの活躍は、
遠く宇宙にまで広がっていきます。

防災×水素エネルギー

防災×水素エネルギー

水素エネルギーが活用されるのは、
毎日の生活の中だけではありません。
大きな災害が起きたとき、
非常用のエネルギー源としても
役立つ
ことが期待されています。
電気が通じなくなっても、たとえば
燃料電池を搭載したFCVがあれば、
そこから電気を引くことができるからです。
2019年9月、台風15号の影響で、
千葉県で大規模停電が発生しました。
このとき、避難所にFCVが駆けつけ、
ドライヤーや掃除機といった生活家電の
電力を供給

不便な生活を強いられていた
避難所の人々に、エネルギーを届けました。
他にも活躍したのが、
都市ガスから水素を取り出し
発電するエネファーム(家庭用燃料電池)です。
都市ガスは、電気や水道よりも
災害に強いため、
停電中も電力を
供給し続けることができました。
水素エネルギーが普及することは、
もしものときへ備えることにも
つながっています。

日本×水素エネルギー

日本×水素エネルギー

今、水素エネルギーの研究を、
強力に後押ししている日本。
そこには、大きく3つの背景があります。
1つ目は、気候変動問題
2020年12月、菅首相は、
カーボンニュートラル宣言を発表。
2050年までに、温暖化ガスの排出を、
実質ゼロにすることを掲げました。
この計画の中で、環境への負担が小さい
水素エネルギーは、
重要な役割が期待されています。
2つ目は、エネルギーの安全
エネルギー資源の9割以上を、
海外からの輸入に頼っている日本。
もし外国で大きな問題が発生したとき、
あるいは日本との関係が悪くなったとき、
日本全体がエネルギー不足になってしまう
リスクがあります。
一方で、水素は、
水をはじめとした「H」を含むさまざまな資源
から
つくることができます。自給することも、
幅広い国から輸入することもできるため、
エネルギーの安全を守ることに貢献します。
3つ目が、産業競争力の強化
日本はいちはやく
燃料電池自動車(FCV)を実
用化するなど、
世界に先駆けた取り組みが
行われています。
水素エネルギーの研究開発が
もっと盛り上がることは、
日本に新たな産業
が生まれることにつながります。
水素エネルギーで世界をリードすることを
目指して、日本の挑戦は続きます。

もっとくわしくQ&A

もっとくわしくQ&A

水素って燃えやすいと
聞いたけど危なくないの?
水素は、ガソリンや
天然ガスと同じ、可燃性のガスです。
ガソリンなどと比べて燃えやすい、
燃えるときは素早いといった特徴があります。
一方で、あらゆる物質の中でもっとも軽い
水素は、空気中に広がりやすく、
爆発しにくいという特性も持っています。
そのため、水素ステーションなど
水素をあつかう施設では、
「漏らさない」「漏れたら検知して止める」
加えて、
「漏れても滞めない」という
3つのレベルで安全対策がとられています。
水素の特性を正しく理解し、
安全に十分配慮しながら、
水素と付き合っていく
ことが大切です。
燃料電池自動車と電気自動車
って何が違うの?
どっちが良いの?
クルマに水素を貯めて、
水素を使って発電、
この電気で走るのが燃料電池自動車(FCV)。
クルマに直接電気を貯めて、電気で走るのが
電気自動車(EV)です。
どちらが良いと言いきるのは難しく、
どちらにも得意不得意があります。
たとえば一回のチャージでどれくらい走れる
かという航続距離を比べると、
多くの場合、FCVはより長い距離を
走れます
。またチャージに必要な時間も、
一般に、水素のほうが短くて済む
という
メリットがあります。
再生可能エネルギーでつくった
電気は、そのまま電池に
貯めておけば良いのでは?なぜわざ
わざ水素にするの?
再生可能エネルギーで発電し、
大型の蓄電池に充電するという方式も、
一部で取り入れられています。
このやり方の良いところは、
つくった電気をそのまま電気として
貯めるので、無駄が出にくく効率が良いこと。
一方で、電池に充電すると、
実は放っておいても徐々に
電気が
失われていってしまう
という
デメリットがあります。
電気をわざわざ水素にして貯めておく
理由のひとつが、この貯蔵性です。
時間がたっても失われにくく、
長い時間貯めておける
というメリットが
あります。
また一度水素にしておけば、
発電以外にも
さまざまな用途に
使えるというのもポイントです。
NEDO

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(法人番号2020005008480)